2019年8月7日水曜日

包装のデザイン

日本は今年も猛暑ですが、夏のお中元、暮れのお歳暮という習慣が現代も続いており、日頃の感謝の気持ちが込められた品は、暑さの中でもいただいても贈っても嬉しいものです。
昔は 相手のお宅まで出向いて挨拶とお中元やお歳暮を手渡ししたそうですが、今は贈る方も、いただく方も簡便な宅配便となりました。お中元やお歳暮の習慣はいつごろからかは諸説あり その是非もありますが、気になるのはその包装についてです。

贈答品の包装は、個別のパッケージ、それを詰め合わせた化粧箱、その箱を包んだ包装紙、掛け紙、配送用の段ボール箱と保護ための緩衝剤、時によっては雨などから守る防水袋など、中身にたどり着くまで遠い道のりです…
また 通販の場合は、商品がかなり小さな10cm四方程度のものでも、かなり大きな段ボール箱に入っていろいろな種類の緩衝材に包まれて届きます。
ていねいなことは好ましいのですが、そのたびに包装ゴミがたくさん出るのが悩みです。


包装には2つの役割があります。
ひとつは 商品の輸送や在庫時の保護や保存を目的とした包装。
もうひとつは 商品の成分や原材料などの情報を伝えたり、その商品の魅力を伝える広告に近い役割を果たすパッケージです。
包装という場合はその両方をさすのですが、私は上記の前者を包装、後者をパッケージととらえています。主にデザイナーが手がけるのは、このパッケージとよばれるデザインです。

今回は気になる輸送時の段ボール箱について考えました。
通常 商品と段ボール箱の間には緩衝剤として、通称プチプチと呼ばれるエアーキャップや発砲スチロールなどが入っていますが、いづれも合成樹脂のため廃棄時に環境への負荷が大きく、最近は生分解性のあるセルロースやコーンスターチ(トウモロコシ原料)などから作られる 環境にやさしい緩衝剤も増えています。
また緩衝剤として別素材を用いる事なく、外箱と同じ段ボールをコンピュータによる綿密な計測により、商品の形状に合わせて切り込みや折り曲げで商品に添わせ、緩衝剤として保護する方法もあります。



先日 かなり大きな重量のある商品が送られて来た時に、この段ボールの緩衝剤が使われていました。
取り出して 山折りや谷折りを広げてみると、テーブルいっぱいになる1枚の段ボール紙になりました。段ボール紙は捨てやすい大きさに折り曲げるのも容易なものです。他の素材を使わず、外包装と同様の段ボールから出来ているこの緩衝剤は環境にやさしいだけでなく、それを廃棄する時のことも考えられた優れたものです。
商品の保護は販売時にも購入時にも重要なことですが、パッケージデザイナーは中身を取り出した後に残る 包装ゴミのことも考えなくてはなりません。



配送段ボール箱と使用時のパッケージを兼ねて簡素化した
ミネラルウォータのパッケージ(デザイン著者



過剰包装の問題は、いろいろなところで取り上げられています。
日本では 和紙という紙の中でも強度や耐水性に優れた素材があり、江戸時代は 贈答にも和紙で包んで水引をかけたり、紐で括ったりして使ったそうです。そして和紙は中身を取り出した後、その強度を利用してエコバックのように他の買い物に使ったりして 再利用したそうです。
また当時は 液体である酒や醤油、油などは、買う人が容器を持参しての量り売りだったそうです。後には 容器であるビンそのものもリサイクル使用される、世界でもまれな優れたシステムでした。社会全体で みんながそれを利用することにより好循環が生まれます。
国連が2030年の目標としている[SDGs(持続可能な開発目標)]の達成を可能にするためには、日本も昔持っていた 優れた社会全体でのリサイクルシステムを再考する機会かもしれません。


今は空気を遮断し脱酸素の調味料ボトルや、片手でも扱いやすいパウチなど優れた機能のパッケージも出ています。
配送の緩衝剤も1枚段ボールのような工夫がされていますが、今後は 社会全体で稼働するリサイクルシステムへの取り組みが期待されます。





※[SDGs(Sustainable Development Goals  持続可能な開発目標)]
2001年に国連が策定した持続可能な開発のための目標。2016年から2030年までに国際社会が取り組むべき、17のグローバル目標とその実現のための169のターゲット目標で構成されている