2021年12月8日水曜日

漢字はおもしろい

日本語における漢字にたいへん興味深い研究者がいます。白川静氏(2006年死去)です。
「漢字の巨人」と言われる氏ですが、その説は難解とも思われていますが「そうだったのかー」というほど斬新な、そして 自由闊達でおもしろい!

グラフィックデザインにおいて、漢字はヘッドラインとしてメインに使う、キャッチフレーズやボディコピーとして使うなど多用します。
前回のHelveticaのように、漢字だけで構成するポスターや装丁のデザインもあります。
文字を扱う時に漢字を深く理解することは、とても大事なことなのです。


文字は生活していく上でも、他の人に意思を伝え、他の人の意図を理解し、必要な知識を学ぶためになくてはならないものです。
漢字は義務教育として小学校からカリキュラムが組まれ、字形を覚え、読みを覚え、書き順を覚え、その意味を学びます。

白川静氏は漢字の研究をたった1人で「字統(じとう)」「字訓(じくん)」「字通(じつう)」という3冊の集大成としてまとめました。この業績がどれほど偉大なものだったか思われます。
白川氏には膨大な著書があり、魅力的な論の展開が書かれていて読むものを魅了します。
漢字を常用し、それをコミュニケーションとして表現するデザイナーは、漢字への理解と楽しさを知ってほしいと願います。

白川氏は著書で「文字の歴史の中で多くの文字が淘汰されていったが、漢字だけの持つ強大な生命力は容易には枯渇しない。漢字には文字が生れる以前の計り知れない、ことばの時代の記憶がある」(要約しました)と言っています。
漢字は言葉としての意味を表すだけではなく、文字本来の成り立ちや意味を記憶として体現しているのです。


古代文字のサイ

白川氏の著書にたびたび出てくる「口(サイ)」という文字があります。(現在の口とは違いますが)このサイという呼び方は白川氏の命名です。
古代の神聖な文書を載書(サイショ)というそうですが、そのサイからの連想だそうです。
「口」という字は顔にある口を指すのではなく、祝詞や呪文のような大事な言霊を書いて入れる入れ物を総称して「サイ」と言ったそうです。

たとえば「言」という文字は口の上に4本の横線がありますが、古代文字では横線ではなく「辛」と書き、大きな針を意味するカタチをしていたそうです。
これは入れ墨の針を指し、神聖な誓いを神に祈って、誓う時の言葉を表したそうです。
「口」はいろいろな漢字に出てきます。「口」は漢字がもともと持つ そもそもの意味に大きく関係してきます。
白川氏は「口」が含まれる多くの漢字を新しく体系化しました。


ここでも何箇所か引用させていただいた「白川静 漢字の世界観」松岡正剛 の著書では「漢字はまさに四角い方形の姿をした「意味の方舟」たちなのです」とあります。
漢字が持つ本来の意味を考えることは、とても興味深くワクワクします。


参考:「文字問答 白川静」 「白川静 松岡正剛」 「漢字は楽しい 小山鉄郎」
図版:「白川静 松岡正剛」