2022年2月3日木曜日

木の気持ち

夜の街にあふれるさまざまなイルミネーションは、デジタル技術の進歩により主にLEDが使われています。先に開発された赤色LED、黄色LEDとともに青色LEDが加わることで白色まで再現できるようになりました。
最近はクリスマスなどのイベント時期のみならず、ターミナル広場やショッピングモールなどいろいろな場所で大掛かりなイルミネーションを見かけます。

イルミネーションは もともとは電飾と呼ばれていた装飾で、電気を用いた装飾を指します。
装飾としてだけでなく デジタル技術を用いて表示や通信の手段としてイルミネーションを用いることも増え、イルミネーションサイネージと言われます。
そしてあまり高温にならないと言われるLEDを用いたイルミネーションは、生きた樹木の並木などに取り付けても木を傷めないと言われています。


暗い夜空にキラキラと輝く光の並木は圧倒的な存在感なのですが、同じ並木を昼間の明るい光の中で見ると木の幹に無数に絡み付いた電線、電球などその姿は痛ましいものです。
また イルミネーションという言葉は星明かり(星光)を再現することから生まれたということですが、実際にはイルミネーションの強い光は夜空に輝く本物の星明りも弱めてしまいます。
そして 夜間の強い光は人間の健康や動植物の生育にも悪影響を与える場合もあるとも言われています。

最近は大掛かりなため設置が大変なのか、使用しない期間も電線等を外さず無惨な姿のままです。
樹木はわれわれと同じ生き物なのです。
土壌から養分や水分を吸収して、光合成をして生きている生物なのです。

その大切な幹や枝に幾重にも電線が巻きつき、太いテープでコンデンサーが貼り付けられている木もあります。そして細い枝の先にまで電線が絡みついた様子に、息苦しさを覚えるのは私だけではないでしょう。
もし木に伝える手段があったなら「もうやめてくれ!苦しい!」と叫ぶことでしょう。


寒い冬にも細い枝に小さな蕾のふくらみがつき始めます。2月に入れば、だんだん蕾がふくらみを増して、春にはみずみずしい若葉とともに、美しい花が咲き誇るでしょう。
葉が落ちて枝だけのように見えても、そこには若葉の芽や蕾の芽があるのです。
樹木の生きようとする力を削ぐような行為は、人間の傲慢だと言えるでしょう。

一時のイルミネーションの輝きを求めて、生きている樹木を犠牲にすることはもう止めにして欲しいと強く思います。
また、過剰なイルミネーションはエネルギーの浪費にも繋がります。LEDの普及に伴ってイベントの規模が大きくなったり個人家の使用も増え、エネルギーの浪費が増えることにより、ひいてはヒートアイランドや地球温暖化の進行を促している一因とも言われています。
このような問題は光害と言われています。


デザイナーはともすれば 伝えたい!表現したい!ことに目を奪われることがあります。
その結果、痛みや苦しみを与えるようなことがないかを謙虚に考える想像力と思いやりを忘れることがないように願っています。