2022年6月18日土曜日

ステーショナリー

 大きなホテルや旅館などで、美しいデザインの便箋や封筒をインフォーメーションブックで見つけたことがあるかもしれません。コーポレート・ステーショナリーです。

企業や組織は自社のシンボルマークやロゴタイプを制定し、そのデザインを生かした便箋や封筒、名刺を持ちます。

この一連の制作物はコーポレート・ステーショナリーと呼ばれ、そのデザインはCI ( Corpolate Identification )として制定されたシンボルマークやロゴタイプを核としたベーシックデザインシステムとして展開されます。ステーショナリーはその代表的な制作物です。

企業の国際化が進み、さらにダイナミックに発展している現代において、CIも変化し再編成される流れがありますが、企業にとってCIのデザイン展開は変化しても、その意味は変わりません。

CIについては次回とし、ここではコーポレート・ステーショナリーについて書きます。


コーポレート・ステーショナリーは 以下の4点が基本です。

•レターヘッド(便箋)

•エンベロウプ(封筒)

•コンプリメンタリー・スリップ(一筆箋、添え状)

•ビジネスカード(名刺)



中心となるレターヘッドの起源は、18世紀初頭にビルヘッドと呼ばれた商取引に使われた請求書(ビル)だったと言われています。

レターヘッドはレター用紙の上部に企業名やシンボルマーク、ロゴタイプなどがアドレスを含め印刷されていることを指しましたが、のちにレターヘッドは上記の印刷された紙そのものを指すようになりました。

レターヘッドは企業の正式な通達として認識されるものですから、その紙の選択、色彩、印刷方式まで非常に注意深く厳選されます。


正式にはレターヘッド専用紙として「透かし」という特殊技法を用いて、ウォーターマークという印を入れた紙が使われます。ウォーターマークはのちに偽造防止と企業の信用保証の印になりました。

ウォーターマークは製紙工程で入れられますが、その種類にはライン・ウォーターマーク(透かして白く見える)とシャドウ・ウォーターマーク(透かして黒く見える)があります。さらにこれを組み合わせた複雑な美術品のようなウォーターマークもあります。

この透かしの技術は紙幣や有価証券などにも用いられ、偽物から本物を守る重要な役目を果たしています。




多色箔押し

レターヘッドには「箔押し」という印刷方式があります。

箔押しには色々なタイプがありますが、メタリックホイル(金属箔押し)とピグメントホイル(色箔押し)の2種類が代表的なものです。シンボルマークやロゴタイプなどを箔押しとすることにより、企業にハクがついてその価値を高めています。

余談ですが「ハクがつく=価値が上がる」という言葉は、箔押しをすることによる高級感、公式感が表現されることから来ているそうです。



コンプリメンタリー・スリップはあまり馴染みがないかもしれませんが、資料やサンプルなどを送る時などにつける送付状や添書きです。日本では昔から一筆箋として使われてきたものと同様です。レターヘッドを用いるまでもない時などにたいへん便利です。

サイズは基本的には、A4の縦1/3が用いられます。


ステーショナリーの各サイズは日本では以下のサイズが一般的です。

レターヘッド     A4(横210×縦297mm)

エンベロウプ    長3横(横235×縦120mm)

コンプリメンタリースリップ    A4(横210×縦198mm)


サイズについてはヨーロッパではレターサイズが使用されていましたが、現在はA版を基本としています。

ビジネスカード(名刺)は、さまざまなサイズが混在していますのでサイズについては省略します。

その他 折り方や色々な工夫があります。たとえばエンベロウプのフタとなる折り目に1cm  ほど糊のない所がありますが、これはレターオープナーを差し込み開けるための工夫だそうです。



現代 CIは印刷メディアに加えWebメディアでも展開され、コーポレート・ステーショナリーも印刷メディアと同様にWebメディアでも企業イメージを伝えるために重要な役割をはたしています。





参考:株式会社ヤマト「CONQUEROR NEWSLETTER」