2018年9月7日金曜日

みる力

先日 久しぶりに辞書を購入しました。「大辞林」という厚さが 8.5cmもある辞書です。
第三版になり、同時にWeb版「大辞林」も使えるようになりました。
辞書好きとしては、1988年の初版当時も欲しかったのですが、手がでませんでした。

杉浦康平 佐藤篤司の両氏によるブックデザインは、さまざまなアイディアが盛り込まれ随所に そのデザインが光っていますが、中でも「あかさたなはまやらわん」の48文字の各見出しのデザインが楽しく、単調になりがちな誌面をひきしめています。

たとえば【あ】なら、人が組み合って「あ」の形を作った図が入っています。【へ】のように一人が腰をまげただけの図もあれば、【み】のように 大人二人と子供一人が入り組んでアクロバティックに文字を作っている図もあります。
ちなみに私が好きな字は、【ま】は男二人の肩車の形 【め】は男三人が背中に乗った形 【の】は男一人が前屈みで袋を前に出した形 【ゆ】は男3人が宙に浮いたようなアクロバティツクな形 などなど
著作権がありますので ここではその図が載せられないのが残念ですが、想像してみてください。


はじめにデザイナーにとってもっとも身近な「みる」という言葉を引いてみました。

【みる】
①(見る)視覚によって物の形・色・様子などを知覚する
  「建物を正面からみる」「みたこともない鳥がいる」「みるからに強そうな男」
②③(観る)風景などをそこへ出かけていって楽しむ
  「桜をみに行く」「まだ歌舞伎をみたことがない」「内野席で野球をみる
④文字・図形などによって表されている内容を理解する
  「朝刊はまだみていない」「心電図をみる
⑤存在を確認する。認める。ある。みられるの形で用いる事が多い
  「まれにみる秀才」「昔の農家に多くみられた間取り」
⑥判断を下すために物事の状態などを調べる
  「雲をみる」「相手の出方をみる」「様子をみる」「味をみる」「湯かげんをみる
⑦判断する。評価する
  「世間を甘くみる」「人をみて法を説く」
(診る)医者が体の様子を調べ、健康状態を判断する。診断する
  「医者にみてもらう」「患者の脈をみる」「患者をみる
⑧(看る)悪い事態にならないよう、気を配って世話をする
  「入院中の親の面倒をみる」「買い物に行っている間、この子をみていて下さい」

まだまだ続きますが、詳しい解説は[大辞林」を引いてください。

デザインの送り手としては、「みる」は受け手に①④⑥⑦の流れをおこさせることなんだと気づきました。
たとえば 新商品発売告知ポスターの場合は

①視覚によって物の形・色・様子などを知覚する
   → ポスターに気づき足を止める
④文字・図形などによって表されている内容を理解する 
   → 新しい改良された新型が出たことを知る
⑥判断を下すために物事の状態などを調べる
   → 実物で製品特徴や改良点などを調べる
⑦判断する。評価する
   → 価格や条件などを検討し、購入を決める


毎日のように使っている言葉も、辞書を引くといろいろな発見や用法などがあって面白い!
これからも意識的に「みて」いきたいと思います。




「大辞林」第三版 松村明編 三省堂 2006年 
注:「大辞林」からの解説などに省略があります。正しくは「大辞林」をご覧ください。






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