2019年5月7日火曜日

時間地図・犬地図



こもれびがキラキラと光る 新緑のきれいな季節になりました。
人にとって気持ちのいい季節は、きっと犬にとっても気持ちのいい季節でしょう。
前回の杉浦康平氏の「味覚地図」に続き、「時間地図」とその発想につながる「犬地図」についてです。

「時間のヒダ 空間のシワ」を主題として可視化した、杉浦康平氏の伝説のダイアグラムに「時間軸変形地図」があります。地図の概念をぬりかえた!とも言われる試みです。
「時間軸変形地図」は、出発点を中心に同心円上に交通手段を用い、到達時間をそれぞれの方位に配置した 時間軸による変形地図です。

私たちが見慣れている日本列島の形が、引っ張られ 飛び散ったような大胆な変形をした日本列島は衝撃的であり、魅力的でもあります。
また 6都市の中心部から同心円上に目的地への到達時間で変形した地図は、それぞれ交通網の発達した地域と、発達の遅れている地域におこる地域格差を可視化しています。
現在は さらに交通網は発達し、この格差は大きくなっていることでしょう。
杉浦地図では この空間の地図から時間の地図への試みはさらに発展していきますが、また次の機会に紹介できればと思います。


東京、大阪を中心とした日本列島の時間軸変形地図

6都市を中心とした時間時間軸変形地図



時間地図の発想の元となった、愛犬の足跡をたどって図化したダイアグラムに「犬地図」があります。杉浦氏は「地図の始まりは足跡」と言っています。
感覚器官の依存度が 人間とは大きく違う犬の行動範囲を、犬の気持ちになって想像しながら作った地図だそうです。

犬の視線で見ると、室内の家具やインテリアは単なる構造物であり、人間の何万倍ともいう嗅覚の犬にとっての興味は、人の匂い 中でも汗の匂い 足跡の匂いは、床や家具の脚の下部、机の裏面あたりに強く染み付いて 興味を引くそうです。
屋外では 地面や低い植込み ゴミ箱などがあります。中でも 他の犬、異性の体臭や尿の空間的な配置には、ひときわ敏感だそうです。

犬地図


近年 犬の優れた嗅覚は、さまざまな分野で活用されています。
特定の人物の匂いをたどって追跡する警察犬、水際で国内流入を防ぐ麻薬探知犬など、人にない優れた嗅覚を生かした犬です。
災害救助犬も地震や土砂崩れなどの災害で、家屋の下敷きや土砂に埋もれた人を その嗅覚を生かして迅速に発見するように訓練された犬です。
また その優れた嗅覚は、ガン患者の尿から特有の匂いを感知し、初期にガンの発症を発見するそうです。
人にやさしいこの検査方法は、検診に役立つのも間近と思います。


人も犬も それぞれに優れた能力を持っています。
しかし 人にとって快適なことと、犬にとって快適なことは違います。「犬地図」は、犬の目線、犬の気持ちになって想像すること 知ろうとすること が大事なんだと教えてくれます。
「犬地図」は、愛犬へのラブレターもしれませんね。



参考文献:「時間のヒダ、空間のシワ…[時間地図]の試み」 杉浦康平 ダイアグラム・コレクション 鹿島出版








0 件のコメント:

コメントを投稿